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2012年3月30日 (金)

「沖縄密約 ──「情縄報犯罪」と日米同盟」 西山太吉著 岩波新書

「沖縄密約 ──「情縄報犯罪」と日米同盟」西山太吉著 岩波新書

沖縄密約(表紙扉)
日米の思惑が交錯した沖縄返還には様々な「密約」が存在したことが、近年相次いで公開された米公文書や交渉当事者の証言で明らかになってきた。核の持込み、日本側の巨額負担……。かつてその一角を暴きながら「機密漏洩」に問われた著者が、豊富な資料を基に「返還」の全貌を描き、今日に続く歪んだ日米関係を考察する。

(編集部)
 一九七一年六月に調印、翌七二年五月に発効した沖組返還協定において、米軍用地復元補償費四〇〇万ドル(当時のレートで一二億円強)は、米側が日本へ「自発的支払を行なう」と記されていた(本書一二三頁)。だが、この問題につき、著者は日本側による〝肩代わり〟の事実を外務省女性事務官から入手した極秘電信文により突き止めた。著者は、これを記事にした上、さらにこの事実を国民に伝達するための有効な方法として、国会の予算委員会を通じた究明という手段を選び、七二年三月に著者から受けとった同電信文を基に、社会党の横路孝弘衆院議員が「密約」の存在について政府を追及した。

著者と事務官は国家公務員法違反容疑で逮捕され、「知る権利」を守れとの世論が高まったものの、両者の個人的関係が起訴状に記載されたのを契機に、焦点が「沖縄密約」から「機密漏洩」へとすり替えられる形となった。事務官は一審で有罪(懲役六カ月、執行猶予一年、控訴せず確定)。著者は一審での無罪が二審で逆転有罪となり、七八年六月、最高裁で確定(懲役四カ月、執行猶予一年)した。
 だが、その後二〇〇〇年五月、二〇〇二年六月に「密約」を裏づける米公文書が見つかるとともに、「四〇〇万ドル」は〝氷山の一角〟であることも判明し(本書第3章扉)、二〇〇五年四月、著者は謝罪と損害賠償を求めて国を提訴。二〇〇六年二月には「密約はあった」とする交渉当事者の証言も報じられた(第5章扉)。

 はじめに
 東京地方裁判所は二〇〇七年三月二七日、私が国を相手に起こした「沖縄密約」をめぐる名誉毀損損害賠償請求の裁判で、請求棄却の判決を下した。かつて三十数年前の刑事裁判でも、この「沖縄密約」の違法性は「機密漏洩」にすり替えられることによって、なんら究明されることなく終わった。目の前に、歴然たる証拠があるにもかかわらず、捜査は意図的に回避され、その真実は政府側による広範な〝偽証〟とそれに基づく検察の裁判妨害により徹底的に隠蔽されたのである。この実相は、ここ数年来の相次ぐ米外交秘密文書、あるいは最近では当の検察側証人自身の告白によって白日の下にさらされ、密約の違法性なるものは、いまや必要にして十分な証拠により、完全に追認されるに至った。
 しかるに、こうした新証拠に基づいた今回の民事裁判においても、裁判官は、私へのかつての起訴に関連しては、除斥期間(権利の存続期間、二〇年)を持ち出し、また最近の政府首脳部による一連の密約否定のウソについては、行政上の発言に過ぎず、特定個人に向けられたものではないため名誉毀損にはあたらないとするだけで、核心ともいうべき密約の問題には、一切立ち入ろうとしなかった。
 国家安全保障会議の発足、あるいは日米軍事再編(この呼称については、一四六頁参照)にともなう国による情報管理がいっそう強化され、さらに沖縄密約の否定が国会議員からの質問主意書への回答として閣議決定されたという、かつてなく厳しい環境の下での裁判であったが故に、今回の事実上〝門前払い〟の司法判断は、およそ想像のつくところでもあった。果たせるかな、判決は、そうした想像通りのものとなったのである。
 しかし私は、ここで引き下がるわけにはいかない。否、判決が最もグレードの低いものとなっただけに、逆にこれをバネとして、上級審において厭うほかはないのである。
 私は、こんどの裁判の過程で沖縄密約なるものの全貌をつかむことができた。それは、二、三の密約に限定されるべきものではなく、沖縄返還全体を包み隠す巨大な虚構といえるほどのものであった。また、この虚構は、単なる一過性のものではなく、現在進行中の日米軍事再編、つまり日米軍事一体化の形成につながるその後の日本の外交、安全保障を方向づける起点といえるものであった。
 さらに、この虚構を隠蔽するために当時の政府が用いた手法は、「情報操作」の域を越えた、まさしく「情報犯罪」であり、現在の状況に照らして考えれば、あれから三五年たったいま、改めて国と報道機関の関係について、示唆に富む現代的教材を提供しているともいえる。
沖縄返還についてはすでに多くの書が出版されているが、私は以上に述べた視点に立って、私なりにこの間題を体系的に取りⅠげてみたいと思う。識者をはじめ、広く国民の間での論議において、ささやかなりとも一素材を提供することができれば幸いである。

 あとがき
 私は、本書において「沖縄密約」、をめぐる国の組織的犯罪の実態を総括し、系統的に説明してきた。日米同盟の変質にしても、それに関する情報がメディアを通じて正確に主権者に伝達され、それによって真剣な論議が交わされた上でのものではなかった。この中で、読者も政府のいう〝密約否定〟など、とうていあり得ないことを知っていただけたと思う。このような「情報犯罪」は、納税者、主権者とそれを代表する国会に対して偽計を弄するという点で重大であるが、同時に、国の外交・安全保障の根幹にかかわる問題で政権益のため権力を濫用したという点でも厳しく糾弾されなければならない。そして、この情報犯罪は、私に制裁を科すことによって、隠蔽され、擁護されたのである。こうした犯罪がよって立つ基盤は、権力、メディア、民衆の三つの構成要件から成立するが、これら要件についても私なりの考え方を提示したつもりである。
 私が二年前、国を相手どって提訴したのは、沖縄返還を原点としてはじまったこれらの犯罪が、いまなお再生産され、今日的事件として継続しているからである。私は、自身の名誉回復以上に、この問題提起が裁判を通じて再認識され、広く論及されることのほうを、より重要視する。そして、その目的は、当初、私が期待した以上に達成されつつあるように見受けられる。吉野文六(元・外務省アメリカ局長)発言(二〇〇六年二月)も、本裁判によって引き出されたともいえるからだ。
 いま、わが国では、国家への権力集中に拍車をかけながら、他方では特定国との軍事同盟関係を一体化するという特異な路線が敷かれようとしている。この路線は、安倍内閣に入って従来以上のスピードで推進され、これにともない、メディアの諸活動にも各種の規制が加えられようとしているかのようである。いまのメディアに要請されるものは、権力に対する監視機能の再構築であり、それは、とりもなおさず民衆の側に立って、権力との均衡を回復し、維持することである。私は、メディアの戦士たちが、このような問題意識の上に、立ち上がることを期待する。
執筆を終えるにあたり、米国の秘密文書を入手して、わが国ジャーナリズムの世界に貴重な資料を提供された琉球大学教授の我部政明氏、ならびに東京放送(TBS)報道局長の金平茂紀氏に対し、深甚なる敬意を表したい。また、今回の裁判を通じて絶大な支援と協力をいただいている原寿雄(元・共同通信編集主幹)、田島泰彦(上智大学教授)、鳥越俊太郎(ジャーナリスト)の各氏に対し、心より感謝の念を表したい。同じく、裁判の原告代理人たる弁護士、藤森克美氏と藤森克美法律事務所のスタッフ、浜口みどりさんに対しても改めて謝意を表するものである。
 私は、裁判の過程で左記の記者をはじめとした多くの若きジャーナリストを知ることができた。このことは、晩年の私にとって、何ものにも代えがたい喜びであった。これらのジャーナリストは、鮮烈な問題意識を抱きながら、果敢に取材を続けている。私は、彼らに望みを託したい。
 往住嘉文氏(北海道新聞)、諸永裕司氏(朝日新聞)、毒宏士氏(毎日新聞)、瀬口晴義氏(東京新聞)、佐藤直子さん(同)、松元剛氏(琉球新報)、粟国雄一郎氏(沖縄タイムス)、野村充和氏(共同通信)、植村俊和氏(テレビ朝日)、森広泰平氏(日刊べリ夕)、土江真樹子さん(元・琉球朝日放送)
 なお、本文中でも断わったように、本書では、登場人物の敬称は、基本的に省略させていただくとともに、肩書きは原則として、それぞれの記述における当時のものとした。

  二〇〇七年四月                      西山太吉


西山太吉

1931年,山口県に生まれる.慶應義塾大学法学部卒,
 同大学院修士課程(国際政治学専攻)修了後,毎日新聞社に入社.経済部を経て,政治部記者として首相官邸,自民党,外務省などを担当.1972年,沖組の施政権返還にからむ密約取材をめぐり,国家公務員法違反容疑で外務省の女性事務官に続いて逮捕された。一審で無罪(事務官は有罪,控訴せず確定)となったものの,二審で逆転有罪,1978年,最高裁で確定(懲役4ヵ月,執行猶予1年)した.一審判決後に退社し,福岡県北九州市の西山青果株式会社に勤務,
1991年,退職.「密約」を裏づける米公文書などの報道が相次ぐ中,2005年,謝罪と損害賠償を国に求めて提訴したが,除斥期間を過ぎているとして敗訴.現在,25名の原告団の一員として沖組密約文書開示請求訴訟中.著書に『情報は誰のものか』(共著,岩波ブックレット,2003年)がある。

沖縄密約 ──「情縄報犯罪」と日米同盟 岩波新書(新赤版)1073
    2007年5月22日 第1刷発行
    2011年9月15日 第8刷発行

(参考)

「西山事件」 ウィキペディア

外部リンク [編集]
「特集 沖縄密約」(日刊ベリタ)http://www.nikkanberita.com/index.cgi?cat=special&id=200705072322471

 元毎日新聞記者西山太吉氏の言葉(阿修羅掲示板より天木直人サイトのログ)http://www.asyura2.com/0505/war70/msg/547.html

『沖縄密約』西山太吉・澤地久枝・吉野文六「嘘をつく国家はいつか、滅びるものです」/小沢一郎氏裁判 (来栖宥子★午後のアダージォ)
http://blog.goo.ne.jp/kanayame_47/e/31250a2a4121efdb7a17068d36c7c167
2012-02-19

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